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雨ノ森


傘を持たずに雨の森を歩くのは、どうしてこんなにも静かなのだろう。足元に落ちる雨粒が、土の匂いを立ち上がらせ、葉っぱや草の音を消してしまう。それでも、私はなんとなく、この森の中にいるときは自分自身も雨粒の一つになっているような気がして、心が安らぐ。

そんな私が今日、森の中で出会ったのは、一匹の狼だった。霧が深く、視界も悪い中、目の前に現れたその姿には、驚きと恐怖が入り混じっていた。だけど、狼は私に向かって威嚇するでもなく、ただこちらを凝視していた。そして、しばらくたった後、そっと去っていった。

その瞬間、私は自分自身がこの森に閉じ込められているような気がした。私がこの森から出られるのは、その狼が許可を出すまでだと思った。だけど、そんな恐怖心もまた、この森でしか味わえない感覚なのかもしれないと思った。

今でも、あの日の雨の森は私の中で静かな思い出として残っている。

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週末は森にいます