雨中の森と蜘蛛
山登りが趣味の佐藤は、雨の日に傘を差して森へ入った。
雨が降っているので誰もいないはずだったが、どこかで熊よけの鈴が鳴っている音が聞こえた。佐藤はびっくりし、慎重に進んでいくと、目の前にある山火事注意の看板が現れた。
その看板に使われている鉄管に雨粒が当たる音が、熊よけの鈴の音に似ていたのだ。
雨は無常にもしとしとと降り続く。
定期的に蜘蛛の巣に引っかかる感覚があった。髪の毛にまとわりつく感じだ。傘をよく見ると、内側に小さな蜘蛛がいた。どうやら、森のどこかで蜘蛛を引っ掛けて連れてきてしまったようだった。
佐藤は蜘蛛を外に出そうと試みたが、なかなかうまくいかなかったが、蜘蛛が降りるまで待つことにした。すると、蜘蛛はやがて傘から降り、雨中の森へと逃げ去っていった。
雨は静かに降り続く。
佐藤は森の中を歩き続けた。しばらくすると、小さくも美しい滝が現れ、感動した。雨が降り続かないと出現しない滝であった。蜘蛛の出会いが、佐藤に素晴らしい景色を見せてくれたようだ。
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