ツーリングカメラをニコンからキヤノンにした理由
オートバイとカメラの相性は抜群
私にとってツーリングとカメラは切っても切れない存在で、オートバイの”何に乗るか”、”なぜそのメーカーなのか”というのと同じように、カメラにも自分なりの哲学が存在する。
所有カメラの変遷を見ていくと、ペンタックス→ニコン→キヤノンというルートをたどる。
カメラを趣味としてはじめたのは小学6年生あたりからだが、その頃から家にはペンタックスのフイルム一眼レフがあった。PENTAX MZ-10というやつで、成長記録写真から家族写真まで活躍していた。
オートバイに乗り始めてからは、PENTAX *ist DSというやつを愛用した。このカメラは後述するニコンD70sと同様、かなり過酷な使い方をしていた。
*ist DSはオートバイに乗っている間は、どんな場所へも携行した。リアシートにツーリングネットを引っ掛け、カメラ本体は生身のまま括り付けていた。途中で雨が降っても、すぐにはしまわなかった。
ある時、*ist DSの露出補正などに使用するダイヤルが接触不良になったことに気づいた。回しても、露出補正のインジケータは変わらないか、行っては戻ってくるような状態。これではとてもじゃないけど写真を撮影することが難しい。
*ist DSは軽量コンパクトで、マグネシウムボディで頑丈ということで、大変気に入ってはいたが、これを機に買い換えることを決意した。
なぜ、ペンタックス→ニコンにしたのか?
もともと自分はPENTAX派で、その根拠は人生で始めに出会ったカメラがペンタックスだったから、というものだ。次に、ペンタックスのマウントは互換性が取れており、基本的にどのペンタックスレンズでもなんの問題もなく使える点を評価していたのだ。
そんな私がペンタックスからニコンへ鞍替えしたのには、以下の理由があった。
- 質実剛健のニコンというイメージに興味があった
- 他社のカメラへの純粋な興味
ニコンは軍用光学機器をルーツとする会社で、カメラの信頼度は抜群に高いブランドだ。お高くて、無骨で、ビギナーには近寄りがたい感じがニコンのカメラには漂っている。
できるだけ安く、レンズセットで、ニコンの良き時代を感じられるデジタル一眼という条件で探していくと、D70sというモデルが条件に合致した。
ニコンD70sとの道のり
D70sは、もともとD70というニコンのデジタル一眼のアップデート版といった感じのモデルだ。この頃のニコンはマウントにAFカップリングを搭載しており、従来のボディ駆動型レンズはもちろん、電気接点を介したレンズ側AF駆動にも対応している。
後々になって、ニコンはエントリーモデルから中級機に関しては、AFカップリングを廃して、レンズの選択肢を事実上狭めることで、高級機との差別化を測ったのだ。だから、D70〜D300あたりのモデルは、上位機種と同じように往年のニッコールレンズがほとんど問題なく使える良心的なデジタル一眼と言って良い。
そのD70sも、ペンタックスの*ist DSと同じようにバイクツーリングではどこへでも連れ出した。*ist DSのように、リアシートに無造作に括り付けたまま長距離ツーリングをしたり、雨の中でも平気でカメラを取り出して撮影をしたり、それはもう日々が耐久テストのようなものだった。
伊豆スカイラインで落下
ある夏の日、伊豆スカイラインをツーリング中に腰に取り付けていたD70sがアスファルトへと派手に落下した。
しかし、D70sは以下のように、まさにニコンらしい信頼性で”壊れてくれた”のだった。
- ボディの一部が破損したのみ
- レンズとボディの結合には問題ない
- 撮影データは無事
結構なスピードの走行中でオートバイから灼熱のアスファルトに叩きつけられたのにも関わらず、マウントやレンズがもげることはなく、嵌合を保ったままで、ボディの一部は破損したものの、内部のメカまでは損傷した様子がなく、記録メディアは本体内に留まり、撮影データは無事だったのだ。
壊れたことが残念と思うよりも、壊れ方に感銘を受け、ニコンの凄さに驚いたものだ。
それからというもの、sではないD70やD3300を友人から譲ってもらったりして、ニコンユーザーでありつづけた。
なぜキヤノンにしたのか?
結論から言えば、ニコンよりもボディ本体とレンズがリーズナブルで、操作系が馴染みやすかったのだ。
非常にマニアックな話になるが、ニコンとペンタックス・キヤノンでは露出補正のプラマイの方向が真逆なのだ。
ニコンではダイヤルを右に回すとマイナス補正となり、左に回せばプラス露出となる。対して、ペンタックスとキヤノンでは右回しがプラスで、左回しがマイナスなのだ。
ちょうど、車でも似たようなものがあって、BMWとマツダはシフトレバーの前側がシフトダウン、後ろがシフトアップ。トヨタなどは前がシフトアップで後ろがシフトダウン…というような違いに似ている。
些細な違いで、人間の適応力で何とかなるものだと思っている人が大半だと思うが、実は意外にも難しい話なのだ。
ニコンを愛用していた時に、何度かスナップシュートでプラス補正をしていたつもりなのに、あとになって気づいてみたらマイナス補正をして、暗い写真になってしまったことがあった。急いでいる時に、思わずペンタックスの操作系の癖が出てしまったのが原因だ。
また、ニコンはレンズを左回しでロックする。他社の大半は右回しでロックなので、これも個人的な価値観で言えば「慣れないものだった」。
最後の最後まで、ニコンの”逆方向”には違和感があった。
私は、車やバイクにおいても操作系を重視する価値観を持っていて、これに合うものはBMWしかないと思っているくらい、ユーザーインターフェースにはうるさいタイプの人間だ。だから、日常的に使うカメラも、自分の持つ感覚に一致するような使い勝手を持つモノで心地よく使いたいと求めているわけだ。
キヤノンは、カメラブランドとしてニコンと二分する存在で、しかも性能の割にニコンよりもリーズナブルであるという点、EFマウントというニコンのFマウントのような阿鼻叫喚地獄とも言える互換性問題がなく、シンプルにEFレンズであればどの世代のものでもちゃんとAF、IS(Image Stabilizer;手ブレ補正)が使え、しかもフランジバックが大きいので他社レンズもアダプターを使えば難なく楽しめるという点が私の興味を大いに惹いた。
いろいろと調べて往年のモデルであるEOS DIGITAL 30D+バッテリグリップの組み合わせで落ち着いた。
やはり、レンズがリーズナブルでかつ互換性問題がないということは大きなメリットで、事実、私の手元には2つのレンズがさっそく増えている。50mm F1.8の単焦点レンズと、17mm F3.5の超広角単焦点レンズだ。いずれもAF対応で1万円以下で手に入れられる。
もし、これがニコンのデジタル一眼だった場合は、ボディの世代によってAFカップリングの有無と、さらに電気的な互換性、レンズのカニ爪の存在…などなど本当に考えるのが面倒で馬鹿らしいほどに振り回されることだろう。しかも、レンズがお高い。
ということで、2022年現在、私はキヤノンユーザーとなっているが、全くと言っていいほど満足している。しかも、これから先、レンズをさらに増やして、バイクツーリングでどんな写真を収めていこうか思案している日々である。
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