じゃがいもとリチウムイオン電池…じゃがいもはリチウムイオン電池を超えるエネルギー密度!?
脱炭素社会を実現するために解決しなければいけない課題の一つにエネルギーの確保があります。太陽光発電はクリーンなエネルギーで炭素を排出しないので有力な解決方法の一つですが、日中しか発電できないことが問題となります。
太陽光発電だけで生活しようとすると日中の発電量をなんらかの形で溜めておくことが必要となりますが、どうやって溜めるのかという新しい課題がでてきます。
※太陽光発電については、設置場所の土壌・景観汚染や生態系への影響、ソーラーパネル生産工程における大量の二酸化炭素排出や、資源の採掘で多くの問題が議論されています。地球温暖化もまた、している・していないの議論が多くあります。興味深い資料としてCIGS(キヤノングローバル戦略研究所)の研究主幹・杉山大志氏の「屋根の上のジェノサイド」がありますので参考にしてみてください。書籍もあります。
だいぶ話がそれてしまい、申し訳ありません。それでは、話をもとに戻しましょう。
電気を溜めるのだから電池を使えばいいと思うでしょう?2022年の現在においてもっとも優秀な充電できる電池はリチウムイオン電池です。リチウムイオン電池がどのぐらいの電気を溜めることができるか調べてみると、201 Wh/kgとデータが出ています→リチウムイオン電池回路設計入門
Wh(ワットアワー)という単位は1W (ワット)の電力を1時間使ったという意味です。
もう皆さんすっかりお忘れになっていると思いますが、W(ワット)は中学校で習う理科にもでてくる電力の単位で、1Vの電圧で1Aの電流が流れたときの仕事量を表します。
家庭用では125Vの交流が使われるので、8mAの電流が流れれば1Wの電力ということになります(家庭の電気は交流が使われているので、実際にはこの計算は不適切ですが)。
Wh(ワットアワー)は1Wを1時間使ったときの電力量で、そのエネルギーは3600 J(ジュール)となります。
1Jは、1気圧の場所で1℃温度を上昇させるのに使われるエネルギーで、昔はカロリーと言われていましたが、現在は”J:ジュール”で統一されています。
つまり201 Wh/kgは 201 x 3600 = 723,600 J/kg となり、およそ720 kJ (キロジュール)のエネルギーを1kgのリチウムイオン電池は蓄えられることになります。
…ちょっと話が難しくなってきましたね。
これがどのぐらいの大きさかということをジャガイモと比較してみます。
ジャガイモのもつエネルギーはcal (カロリー)で表され、調べてみると89 kcal/150gとありました。
つまり593 kcal/kg です。1 cal = 約 4.2 Jなので、ジャガイモのエネルギー密度は約 2,500 kJ/kgとなります。
これはなんと!リチウムイオン電池の3.4倍ぐらいのエネルギー密度があります。
エネルギーを蓄えるという観点で言えばジャガイモはリチウムイオン電池の3.4倍高性能です。
リチウムイオン電池と比較した、じゃがいものメリットをここで見てみましょう?!
- リチウムイオン電池を超越するエネルギー密度
- それでいて発火しない
- しかも安全に保管できる
- 調理して食べて、人間の活動エネルギーにもできる
じゃがいも…すごいですよね。つまり電気自動車の航続距離ももっと伸びるし、スマートフォンももっと軽くなるということです。
もしかして、じゃがいもバッテリー、登場はありえる?いえいえ、残念ながらこれはあくまで
ジャガイモ中のデンプンに蓄えられた化学エネルギーを素早く電気に変換することができれば、の話なんですね。
でもそういうことができないので、ジャガイモは電池にならないのです。
ちなみに、水素のエネルギー密度は33 kWh/kg = 約120 MJ/kg [日本重化学工業株式会社] なので、同じ重さのジャガイモよりも50倍近くのエネルギーをもっていることになります。水素すごすぎ。さすが、元素周期表で一番左の列に孤高の存在としているだけあります。ちなみに、リチウムイオン電池の「Li:リチウム」も、元素周期表で一番左に存在する、金属の中でもっとも軽い金属です。
リチウムイオン電池が実用化するもっと以前から、多くの科学者・化学者が元素周期表で一番左に唯一存在する最も軽い金属”リチウム”は、電池の材料にしたら相当なポテンシャルがあると目をつけられていたんですよ。
今、私達は当時は実現が困難だったリチウムイオン電池を当たり前に、意識もせず、日常生活の中に溶け込んでその役割を果たしており、恩恵を受けています。よく考えたらすごいことですね。
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