電気自動車「Honda e」は妥協の産物
Honda eが満を持して上市したが、その後に登場した数々の素晴らしく先進的でアイコニックな電気自動車たちにおされて、いまやレジェンドのような薄い存在感に…
Honda eは結論から言えば、欧州のCAFE規制を回避するための、現時点で企業としてとれる妥協点だったのです。
欧州では、企業から出る平均の二酸化炭素排出量が95g/kmを超える場合に巨額の罰金が課されるCAFE規制というものがあります。なので、完成車メーカーは「95kgの壁」ということで、この数字を非常に恐れています。
罰金というとちょっと物騒な感じがしますが、これらは二酸化炭素を排出する自動車産業の低排出化・ゼロエミッション・カーボンニュートラルを達成させるための手段です。
Maartenからの1月のレポートによると、2020年時点でヨーロッパで乗用車から出る平均の排出量は現在125g/kmとなっています。
EUでは制限値を超えた場合に課される罰金が車1台当たり2,375ユーロ(約29万5千円)です。これに欧州で販売した数の車…の掛け算をするとなったら、かなり恐ろしい金額になります。
自動車業界…特に完成車メーカーは規制に甘い日本ではすでに売上の見込みが薄いため、海外市場(欧州、欧米、中国)に力を入れていますが、これらの市場ではCAFE規制やその他の規制も絡み、「日本より売れるんだけど、課徴金でもっていかれる」ような状況です。このような状況の中で、創業当時から”規制上は”二酸化炭素排出ゼロのテスラが、排出枠取引でかなり有利な状況になっており、トヨタやホンダはテスラから排出枠を買っている状態。つまり、「敵に塩を送る」という辛酸を舐める状況になっています。
ちなみに欧州でのホンダの市場シェアはたった1%と、その存在感は非常に小さなもので、Honda eの売れ行きが芳しく無ければ、莫大な罰金を払う必要となってしまいます。
現実を突きつけられたホンダは、テスラのゼロ・エミッション枠連合に加わりました。罰金を払うよりも、テスラに支払いをした方が安く済む、というメーカーのプライドを捨てて、合理的な選択をしました。とはいえ、このアクションはホンダがどうやって二酸化炭素の排出関連規制に従うかを決めるまでの単なる時間稼ぎでしかありません。
当分の間は魅力的なハイブリッド車をリリースし、最終的には多くのBEV(純電気自動車)をラインナップさせる必要に迫られます。2020年にホンダは「2050年までにHondaが関わる全ての製品と企業活動を通じて、カーボンニュートラルを目指す」と宣言しましたが、その後2021年には、2024年に軽自動車のEVをリリースし、二輪車の電動化も進めると発表しています。
Honda eは技術のホンダらしくない、海外市場の規制を回避するための妥協のプロダクトですが、開発された理由がそうであったとしても、将来的にホンダの電動化マイルストーンとしてユーザーから再評価されることを、元ホンダオーナーとしては願っています。
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