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木を植えても、二酸化炭素は減らない。本当のカーボンニュートラルとは何か。



そもそも、二酸化炭素とは何なのか

二酸化炭素は、CO2です。
C(カーボン=炭素)と、O(オキシジェン=酸素)が二個くっついた分子のこと。
炭素も酸素の世界のどこにでもある、ありふれた原子です。
今は小学校6年生の理科で習います。

植物は、二酸化炭素を吸って何がしたいのか

植物は二酸化炭素を吸って酸素を吐き出すので、「森が世界を綺麗にしている」というイメージがあります。しかし、植物が二酸化炭素を還元する目的は、酸素を生み出すためではありません。
二酸化炭素と水から、炭水化物を生成するためです。植物にとって大事な用があるのは炭素の方。酸素は余分なので捨てているに過ぎません。

炭素は、植物の体を作るのに使われます。
植物は土から、窒素、リン、カリウムを吸い上げて栄養にしていますが、これらだけで木のように大きな体を作ることはできないのです。

考えてみれば魔法のような話です。目には見えない気体から、広大な山林が生まれるのですから。このイメージのつかなさが、森と二酸化炭素の関係に誤解を生んでいます。むしろ「腐海の木々は汚れた世界を浄化するために生まれたきたの……」というファンタジーの方が親近感があるかもしれません。

炭素は森に留まり続けない

植物は、植物として生きている間は、その体に炭素を蓄積します。しかし、死ねば元の木阿弥で、再び酸素と結びついて二酸化炭素になります。長寿の植物の中には、数万年生きているものもあると言われますが、その命は永遠ではありません。

二酸化炭素から生まれた森は、植物の生涯を終えると二酸化炭素になる。地上のほとんどの植物は、この循環を繰り返しています。植物が二酸化炭素を吸収して酸素を出すことは、一時的に分子が離れるだけの現象です。植物は有害な二酸化炭素を「無化」しているわけではありません。

カーボン・ニュートラルとは

山林は炭素の塊ですから、将来の二酸化炭素の貯蔵庫でもあります。分子構造が変わることがあろうと、地上にある「炭素の総量」は常に一定である。これがカーボン・ニュートラルの考え方です。
だから、木を植えても二酸化炭素は減らないのです。

現在、二酸化炭素が問題になっている理由は、人間が地中にあった化石燃料を発見し、それを燃やすことで地上の二酸化炭素の量が増えたからです。化石燃料もまた、炭素の塊です。

化石燃料と、二酸化炭素の固定化

植物が死ぬと炭素と酸素が結合して再び二酸化炭素になると説明しましたが、これは正しくはパターン1です。植物の末路にはパターン2があります。
何らかの理由で、植物が水中や地中などに没した場合は、酸素に触れることなく朽ちるので二酸化炭素になりません。その状態で何万年、数千万年という長い時間を経て圧縮されたものが、石炭です。また、石油も動植物が元になっていると考えられています(石油の生成過程は未だはっきりしておらず、無機物由来説もあります)。

これらの化石燃料は、人間が掘り出して燃やしさえしなければ酸化して二酸化炭素になりませんから「炭素が固定化された状態」と言えます。この、せっかく固定化されている炭素を酸化させないようにしようというのが、二酸化炭素排出削減の取り組みです。

かつて地球上の二酸化炭素濃度は、現在よりもずっと高かったと考えられています。動物が生きられる環境ではありません。しかし植物が発生して光合成し、その炭素が地中に没して固定化されることが繰り返されて二酸化炭素濃度が下がった。そのおかげで今日の繁栄を見たのだとすれば、化石燃料を酸化させることは寝た子を起こすようなものというわけです。

非化石燃料なら燃やしてもいい!?

現在、二酸化炭素排出量を減らすことは国際的な共通認識となっており、各国の二酸化炭素排出量はカウントされています。エネルギー消費の多い企業は削減目標が課せられています。しかし、非化石燃料を燃やすことによって出る二酸化炭素はカウントしません。

カーボン・ニュートラルに基づけば、炭素の総量は増えも減りもしない。だから、地上の炭素を使い回しているうちは現在のバランスが保てるはず。地中の炭素をそっとしておけばよいのであって、地上で得られる資源なら燃やしても大丈夫という理屈です。

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