▶ぶどうを食べた時
僕の愛車はホンダのCB400SFだ。自動二輪免許を取得して初めて買ったオートバイだ。
本当なら、そのまま大型自動二輪免許を取得したかったが、時間とお金に余裕がなかったのと周囲のバイク乗りの仲間が400ccもあれば速い。４発ならパワーもあるしサウンドもいいという話もあって自動二輪に留まった。
確かに実際に走ってみると十分な気がする。車より速いし、高速道路にも乗れる。
ある日、ソロツーリングで信号待ちをしている時に、隣にCB1300SFが停まってきた。ミラーシールド越しに横目でCB1300SFを見る。自分のCB400SFとスタイリングは似ているが、エンジンが存在感があり、排気音が図太い音で迫力があった。信号が変わった。CB1300SFはあっという間に加速して小さくなった。
この先は峠道だ。買って４年。毎日のように乗り回して、ここは走り慣れているホームグラウンドだ。
CB400SFでも速いということを見せつけるために…CB1300SFに乗っていても「乗らされているだけ」ということを分からせるために…僕はフルスロットルで追いかけた。官能的な４気筒サウンドの咆哮を携えながら、果たして件のCB1300SFは居なかった。
道の駅に滑り込むと、今日はやたらリッターバイクが目に入った。隼とZZR1200の間に愛車を停めた。ヘルメットはまだ脱がない。オートバイから降りる時に、シールド越しに左右の２台を見たが、カウルやコクピットの質感自分のCB400SFとぜんぜん違うのに驚いた。ヘルメットを脱いだ後は、まるで他のオートバイは存在しないかのような目線で、とりあえずトイレに向かった。
トイレで用を足している時に考えた。
やっぱり…僕は大型自動二輪免許を取得して、リッターバイクを格好良く乗り回したいと。
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